月見猫

PENTAXカメラ愛用、旧レンズ集め、月の写真、野鳥や北海道の写真を写しています 連動ブログhttp://mooncats1966.blog.fc2.com/もどうぞ

月の思い出

もう40年近く前のお話、幼稚園に通う子供は毎日母親と歩いて銭湯へと通っていました
当時住んでいた家は父親が勤める工場の社宅でお風呂がありませんでした、ですからお風呂に入るには夏も冬も歩いて銭湯へと行ったのです
当時の家庭はカラーテレビも珍しく我が家も白黒テレビ、車もありませんでしたし電話もありませんでした
カラーテレビがあったり自家用車がある家は自慢が出来るほどの時代、月へと人間が行ったアメリカの技術は本当に凄かったと思います
母親と銭湯に行くには歩いて30分ほどの道程、途中には公園がありパン工場もありました
冬が近くなると日が短くなり寒さと暗い夜道はと早めに銭湯へと行くのですが子供にはちょうどお腹が空く時間(笑)
銭湯に行った帰りに通るパン工場に立ち寄ると出来たてのジャムパンを買ってもらい母親と公園のブランコに座って食べた思い出が蘇ります

寒くなるとこちらでは季節の匂いを感じます、それはストーブから出る煙の匂い
薪の匂いだったり石炭の匂いだったり灰混じりの匂いが漂う夜の公園で見上げた月を指差して子供が母親に聞きます
「お月さんは何で落ちてこないの?」
「さあねーお母さんは判らないけど学者さんだったお爺ちゃんが生きていたら教えてくれたかもね」
ある夜に母親と歩いていた子供が月を見上げて母親に聞きます
「お母さんと僕が歩いていると月も同じように動くけど僕が止まると月も止まってるね」
「あら本当だね、ずーっと遠くにあるからそう見えるのかもね」
子供向けの図鑑に載っていたロケットを見て子供がお父さんに聞きます
「何で月に行ったロケットや宇宙船は見えないの?あんなに大きなものなのに燃えちゃったの?」
「月は遠くにあって近くなら本当はもっともっと大きいけどあんなに小さく見える距離だからロケットも小さくって見えないんだよ」
幼稚園に向かう途中に昼なのに見える月を見つけて子供は幼稚園の先生に聞きます
「朝なのになんで月が見えるの?もう夜が来ちゃうの?暗くなったら帰れないよ」
「きっと月が間違えて朝なのに出てきちゃったのかもねー」
きっと大人にとっては微笑ましくてもいざ正しく答えるには難しかったり面倒だったりの質問だったでしょうね(笑)

戦時中に亡くなった祖父は地質を研究している学者だったらしく炭鉱での発破実験中に事故で亡くなったそうです
時代が戦時中ということもあって母親に聞いても子供の頃だったのもあり詳しくは憶えていないとのこと、ただ月のことをよく話してくれて娘である自分の母親が大人になりその子供(自分)が大人になる頃にはきっと月には人間が住んでいるだろうと話してくれたそうです
アポロも到達していない時代の話、祖父も月への夢を抱いていた一人なんでしょうねー
中学に上がり望遠鏡で月を眺めるようになった自分に母も祖母も「お爺ちゃんも月が好きだったね」と話します
当時はまだ北海道に月への進出でアメリカと競い合ったロシア(ソ連)のものと思われる未確認機がよく領空侵犯していて外で遊んでいても黒い機体が低い高度で飛んで行ったり、テレビでは毎週のようにUFOの番組が放送されていたり宇宙を見る目はどちらかと言えばミステリーや秘密めいたものばかりでした

その頃知った本と人が「ニュートン」誌と竹内均さん、小学生で学研が大好きだった自分は中学生には高過ぎたニュートンを図書館で読み
竹内さんが判り易く解説してくれる物理や科学はますます自分を理科好きにさせてくれました

30年が過ぎ、その頃に想い描いていた未来とは違って月に人間は住んでいませんし探査は進んでも月面基地すら出来てはいません
自分も「科学者になりたい」という子供の夢は何処にいったのか気付けば「かがく」は「かがく」でも「化学」の方で仕事をしています
そして当時子供だった自分は親となり息子は当時の自分と同じ年頃に、息子はあまり月や天文に興味があるように感じませんが月を眺めたり写したりしている父親をどう見ているのかな?

これから数十年が経って公園で月を見上げた子供がお父さんに「何でお月は落ちてこないの?」と聞きます
「何でだろうね、お爺ちゃんなら月が好きだったからいっぱい教えてくれたのにね」と我が息子も父親になって話しているのかな?(笑)

月は昔の暦に使われるほど定期的に満ち欠けを繰り返しています、細かく言うと同じように見える月は無いのですが普通に見上げていれば月の満ち欠けは一通り見てしまうとあとは同じようにしか見えず飽きてしまうもの
ですが数十年の時が経ってもその姿は大きく変わらず月と過ごす時間が増えればそれだけ思い出も増えてきます
10年前・20年前・30年前・40年前、そしてこれからの50年前・60年前と変わらぬ月の姿を見上げながら様々な思い出と過ごすのもお月見の楽しみかもしれませんね

今夜も天気が悪く天気予報では季節はずれの雪まで降る予報、お月見が出来ない日が続きますが懐かしいニュートンを見つけてきて読みつつ昔の思い出を書いてみましたー